SUSTAINABILITY
持続可能な
社会
Regional Development With Nature
自然の恵みとリスクを
一緒にマネージするまちづくり
MS&ADグループは、誰もがどこでも安心して暮らし続けられる「レジリエントなまちづくり」に取り組んでいます。「グリーンレジリエンス」を提唱する熊本県立大学特別教授の島谷幸宏先生とともに、MS&ADグループの思いである「持続可能な社会の実現」に向け、防災や減災に役立つまちづくりを推進しています。
レジリエントなまちづくりに向けて
気候変動による自然災害への影響についてどのように見ていますか。
風水災は明らかな増加傾向にあり、その原因は様々ですが、気候変動が影響していることは確かでしょう。以前はこうした災害に対して、例えば護岸工事などにより被害をゼロに近づける取り組みが行われてきましたが、最近の極端な気象の状況では災害をゼロにすることは限界に近いと考えています。
日本は海に囲まれた島国で雨に恵まれ、活火山もたくさんあるので、日本人は自然災害とともに生きてきたといって良いでしょう。自然災害との共存を長い歴史の中でずっと積み重ねてきたことで、自然がもたらすリスクと恵みのマネジメントが暮らしや社会の基本にありました。こうした自然の機能を防災や減災に生かす取り組みや研究は、日本のみならず世界に広がっています。
世界的な潮流となっている考え方とはどのようなものでしょうか。
豊かな自然を守り、自然と共生する生き方こそが、防災や減災に役立つということ。つまり、自然エネルギーを使い、食べ物も新鮮でおいしく、環境負荷の少ないローコストで豊かな生活が、いざという災害のときに被害を和らげ、迅速に復興できるという考え方が世界的な潮流です。もっとも、日本では、自然を使って災害のリスクを回避しながら、自然から一緒に恵みを受けるようにすることは古来からある考え方であり、知恵でした。こうした、過去から引き継がれてきた自然の恵みを活用した地域活性化ができれば、その地域の防災・減災力、回復力は間違いなく上がる、その概念が「グリーンレジリエンス」です。
留意すべきこともあります。自然の機能を防災や減災に役立てようとする仕組みは被害をゼロに抑えられるものではなく、その効果には不確実性が残ります。そうした不確実性があるために、この仕組みは国や自治体が率先して取り組みにくい領域だということです。
しかし、小規模な被害に抑えられれば復旧も早く、災害からの回復力も早くなります。国や自治体だけでなく、地元の住民コミュニティが積極的に取り組めばこの仕組みは有効に機能します。さらに、お互いの顔が見える交流を生むので、災害の時の協力体制や横の連携につながることも期待できます。
グリーンレジリエンスを高める取り組みについて教えてください。
地域のコミュニティだけではなく、例えば企業がビルの緑化に取り組む事例が増えています。都市の企業緑地では、ヒートアイランドやゲリラ豪雨による洪水の抑制の効果がありますし、植生が地域の生物多様性を育み、都市住民の憩いの場にもなっています。都市において多様な人が出会うコミュニティの形成につなげることも可能です。自然からの恵みを中心に第一次産業や観光などが結びつき、そこにコミュニティが主体的に関わることで、その地域の地域力は高められ、結果、災害時の協力体制、復興力も備わっていくのです。
MS&ADグループの三井住友海上が本社を構える、三井住友海上駿河台ビルの緑化もよく知られた取り組みですね。ビルの緑化が一般的ではなかった1984年から屋上庭園を備え、時代に先駆けた都市緑化を行ってきました。
屋上庭園には良質な土壌が維持されていて、豪雨の際も緑地が水を貯める効果が高い。健康的な土壌は、高木や低木、草花など多様な植生を丁寧に維持することで保たれ、そこにはいきものも多く集います。損害保険会社が緑と水といきものをつなぐビルを運営していることに大きな意義があると考えています。
MS&ADグループとは、熊本県球磨川流域における緑の流域治水プロジェクトでも協働しています。2020年7月に大水害に見舞われた球磨川流域ですが、持続的な地域の構築のために、「流域治水」に貢献する湿地の保全・再生を中心に、地域の社会課題解決に取り組んでいます。
自然の恵みを活かし、生物の多様性を保護する一方で、自然災害の被害を軽減し、その魅力を活用して地域を活性化させる「グリーンレジリエンス」という考え方に基づき、レジリエント(回復力のある)なまちづくりを共同推進しています。